スタートライン
人生で一番って言ってもいいくらい、緊張している。
手汗がすごくて自分でも笑える。
でもやっぱり言っておきたくて。
「オレ、藤原のこと好きなんだ」
「…オレも啓介さんのこと好きですよ」
そりゃないぜ、そんなあっさり、普通な顔して。
こっちは心臓バクバクで口から飛び出していきそうだってのに。
赤面してるのオレだけじゃねえか。
「…もしかして冗談だと思ってる?」
「…啓介さんこそ冗談と思ってますか?」
質問に質問で返すなって。
あしらわれてるのか、もしかして。
どう言や伝わるわけ?
「お、おまえのこと抱きたいとかまで思ってるっていう意味の、好き、だぞ。分かってる?」
「どうやったら啓介さんオレのこと抱いてくれるかなとか思ってるのも、同じことですよね」
「…へ?」
「オレ、啓介さんだけなんですよね、こんな気持ちになったの」
信じがたい言葉がぽんぽんと飛び出してきて、もう藤原が何言ってるのかわかんねえ。
ますます自分の顔が熱くなるのは分かるのに、目の前のこいつはなんでこんな平然と
しかも今軽くため息までつきやがった…!
「啓介さんモテるだろうし、正直どうやって振り向かそうかとか悩んでたんですけど」
「な、な、な…っ」
もう言葉にならない。自分でも何が言いたいのか頭の中が整理できない。
どんどん近付いてくる藤原に…あ、捕まった…。
絡んだ指先が熱い。
「啓介さん。オレ、すげー…うれしい」
「…じゃあ、今からオレがすることも、嫌じゃないんだよな」
絡めた指を引き寄せて、いつもより饒舌な唇を塞いで、夢じゃないって確かめる。
その白い頬に、朱が挿すまで。
2012-06-01
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