目を覚ます甘さ
飛び起きた。
それはまるで、予測もしない真夜中の襲撃。
暗闇の中、口元が緩むのはとめられない。
『拓海!』
まだ慣れない、あの人の声が自分の名を呼ぶ。
まだ慣れない、あの人の見せる自分にだけ向ける、笑顔。
布団に突っ伏して今見た映像を思い出してみる。
この笑顔だけは、独り占め。
ほかの誰も見られない。
…だめだ。もう眠れない。
視線の端に、ちかちかと着信を知らせる光。
まさか、という思いと淡い期待が入り混じる。
携帯を手にして、ますます口元が緩んでいく。
ああもう、本当。なんて甘い衝撃。
あわてて着替えて、部屋を飛び出した。
2012-06-03
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