舌鼓
「サトウニシキ?」
「美味かったろ?」
「これって…すごく高いんじゃ」
「さあ…親がもらったもんだし。まあそういうのは気にすんな」
高橋家のリビングで恐縮しきり。
初めて食べたその味がまだ舌の上で余韻を残している。
「あ、そういえばおまえこれできる?」
「え?」
指の先でくるくると踊るさくらんぼのヘタ。
啓介の口の中へ消えたと思ったら、形を変えて出てきた。
「す、げー…」
純粋に感動して、素直な感想がこぼれた。
促されるまま同じように口に含んでも、なかなかうまくいかない。
何度もチャレンジしても、やっぱり最後がうまくいかない。
「いや、こんなの無理でしょ。…どうやってんすか」
顎が疲れて、放棄した。
恨めしげに見やると、ゆっくりと口角が上がる。
「教えてやろうか?」
フフン、と得意げな顔が少し腹立たしい。
それでも同じようにできないことが悔しくて、勢いよく頷いた。
近づいて、理由も分からないうちに頭を固定された。
「わりぃな。オレ言葉じゃうまく説明できねえから、実践あるのみ、な」
「っ、ぅン…」
2012-06-16
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