お年頃
「なんつった」
「……」
「今、なんて言ったよ?」
「聞こえなかったんなら、いいです…」
ここはオレの部屋で、時刻はそろそろ真夜中で、腹もそこそこ満タンでいい年した若モノが
不健康にも昼間っから部屋に入り浸りで
見たがってた映画も録画してたF1のレースも見尽くした。
観るものもなくなったしだからってこれから借りに行く気にもならねえし
こうやって二人でゆっくり過ごすの、一か月ぶりって分かってんのか。
つまりどれだけオレがお預け喰らってるか、分かってるのか、ってことだ。
このオレが、だぜ。
世間話して、はいおしまい、おやすみなさい、じゃやってられねえってんだよ。
無理やりにもぎ取っただろう休みをオレにくれたってだけで
満足してやらねえといけないんだろうよ、本当のところはさ。
けど、オレだぜ? そんなもん、考えるまでもなく無理に決まってるだろ。
せっかく同じ空間にいるのに寝てられねえだろ。寝る間も惜しいんだ。もったいないんだよ。
だから聞いた。「次は何する?」つって。
「なんつった」
「だから、もういいっ、…て」
「良いわけねえだろ、もっぺん言えっ」
やべ。ちょっときつく言いすぎたか。それとも強く腕を掴み過ぎたか?
今、めっちゃビクってしたじゃねえか。ビビらすつもりなんてねえのによ。
「…啓介さん、と………シ、たいって…」
なんで腕に触れただけでそんな顔してんだよ!
その視線がオレにとってどんだけ凶暴なのか、自覚してねえだろ、絶対。
息を詰めて近づいて圧し掛かって、ベッドに組み敷かれてんの、このオレが。
「オレばっか、こんなになって…ムカつく」
バカヤロー! オレなんておまえの比じゃねえよ! 一晩中思い知らせてやる。
言いたい言葉を飲み込んで、勢い任せにかぶりついてくる唇を受け止めて
ついでに体を入れ替えて、腕の中に閉じ込める。
不健康でも不健全でも上等だ。健康優良児ヨロシク貪り尽くしてやる。
「覚悟しろよ、おまえがリミッター外したんだぜ」
2012-07-12
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