never ever let you go

「あ、目ぇ覚めた?」
「…啓介さん」
ベッドの中、オレの顔をのぞきこむ啓介さんに擦り寄ってまだ裸の体を抱きしめる。
キス、してくんねえかな。
「何だよ、珍しい」
だけど嬉しそうに笑って、抱きしめ返してくれる。
包まれる温もりと匂いに目を閉じる。
「啓介さん」
こんなに誰かを好きになったことなんてないんだ。
あんただけなんですよ。
だからキスして、ぎゅうっと抱きしめてくんねえかな。
オレがあんたにメロメロだってお見通しなんでしょう?
「どうした?」
もっときつく抱きしめてくんねえかな。

オレの愛を全部あげるから
毎日毎晩、いつも想ってるんだ
いつだってあんたのことばっか考えてる

「ねえ啓介さん」
「んー?」
こうしてくっついていられるってことがどれほどのことか、分かってんのかな。
「啓介さんが振り向いてくれて…すごく、嬉しいです」
「ばーか。間違えんなよ。振り向かせたのはオレだろうが」
「オレでしょ?」
「オレだっつーの」
その笑顔、たまんないよ。
こんなやりとりですらどうしようもなく嬉しくなれるのに、
だけどもっと愛してほしいんだ。

やっと手に入れたんだ
もっとそばに来てよ
もうあんたはオレのもの
ずっと一緒にいてよ
どこにも行かせやしないよ
いつだって愛してるんだ
ずっとそばにいるよ

「オレのこと、どう思ってますか?」
「今日のおまえはどっかおかしいって思ってるよ」
「そんなんじゃなくて…」
困らせてるのかもしれないけど、あんたの声で好きだって言ってほしいんだ。
そんくらい、分かれよな。
抱きついたままで、さらさらとした広い背を撫でる。
さっきまであんなに熱くて汗も浮いていたのに。
そんなことまで寂しくて、さらに強く抱きしめる。
「まだ聞き足りねえの? さっきまでは言うなーって真っ赤になってたクセにな」
「い…今、聞きたい気分なんです」
「ったく、わがままなヤツ」
髪の毛をくしゃくしゃにかき乱すその手も、優しく触れるその唇も
誰にも渡したくないんだ。
手放すつもりなんて、かけらもないんだよ。
首筋に吸い付いて、しるしを残す。

オレの全部で愛してる
朝も夜も、いつも想ってるんだ
いつだってあんたのことばっか考えてる

「啓介さん」
わがままだってなんだって、あんたの言葉で聞きたいんだ。
見上げると、一瞬だけ息を詰めて頬を赤らめる。
ゆっくり髪を撫でながら、唇が降りてくる。
「車乗ってるときも飯食ってるときも、ばかみたいにおまえのことばっか考えてるよ」
ああ本当に、あんたって人はどうしてこんなに。
「つーか、オレにばっか言わすなよ」
照れたようにまた髪を撫でる大きな手を取って、手のひらに口づける。

こんなに誰かを好きになるなんて、啓介さん、あんただけなんですよ。
だから蕩けてひとつになっちゃうくらい、キスしてくれよ。

「オレだって…あんただけだよ、啓介さん」

2012-09-15

「TINY JAMES」という歌の甘い雰囲気や可愛さが大好きで、その詞を基に諸々付けくわえて小話にしました。 back