グッドモーニング

「体、平気か?」
「あ…はい」

髪を撫でられながら、まだ少し眠気の残る顔を見上げる。
視線に気付けばすぐに微笑んで、キスが降ってくる。

「寒くねえか?」
「…あったかいです」

擦り寄ってみれば何も身に着けていない体が温かくて
目を開けていたいのにまぶたが重くなってくる。
ためらいがちに背中に腕を回してみれば、
力強い腕に引き寄せられて包まれる。

「あの…」
「ん?」

腕の中からすぐ傍にある顔を見上げて、普段は言えないひとことを。

「おはようございます」

少しの間を置いて、肩を揺らした啓介さんがまたぎゅっと抱きしめてくる。
キスのおまけもついてくる。

「…おはよ」

この言葉が、言えると思ってなかった。
なんてことないただの一言なのに、こんなくすぐったくて甘くて
まさか言える日が来るなんて想像もしてなかった。

「言ってるそばから寝てんじゃねえよ」

くすくすと笑うその声を聞きながら、陽だまりのようなぬくもりに
これから先も勝てないんだろうなんて思う。

2012-10-12

back