ひとりじめ
「なーなー、何怒ってんだよ藤原ぁ」
「怒ってないです」
「照れてるとか?」
「ちが…うわ、ちょっ」
ベッドに腰掛けた拓海の前に胡坐をかいて
甘えるように抱きついてくる。
「じゃあなんだよ、そのふくれっ面は」
「だってあんな…店の前であんなことするなんて」
「ちょっとぎゅーっとしただけじゃねえか」
「誰かに見られたりしたらどうするんですか」
呟くようにこぼれた言葉に、拓海の膝に顔を埋めていた啓介が
体を起こしてまっすぐに見上げる。
「おまえの顔見たら、我慢できなかったんだよ」
「………」
「あんな嬉しそうな顔で出迎えられたらさ」
にしし、と照れたような顔で笑う啓介の肩に手を添え、
上半身を屈めて唇を重ねた。
「だ、…だからって、これからは外ではやんないでくださいよ」
軽く触れさせただけで離れた拓海の腰を引き寄せると、
反動でベッドから浮いた体が啓介の膝の上に納まった。
「ちょっと、啓介さ・・・ん」
「部屋ん中なら、いいんだろ?」
腕を回し、啓介の肩に真っ赤になった顔を埋める。
首筋に触れる耳が熱い。
お返しとばかりにきつく抱きしめると、一呼吸の間を置いて口を開く。
「啓介さんこそ、…その顔オレ以外に見せないでください」
2012-11-01
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