A new day is coming
「今年ももう終わりですね」
「だな」
「……」
「……」
年越し蕎麦を食べ終えて、あとは新年が来るのを待つばかり。
隣り合って座ったこたつの中で、しっかりと握った手は離れないまま、
視線は新年へ向けてのカウントダウンを始めるテレビへと向かう。
「あの…この一年間、本当にありがとうございました」
「お互い、すげえ一年だったな」
「すげえ一年でした」
熱い緑茶の入った湯のみを片手で掴み、器を撫でるように親指の先を滑らせる。
啓介の視線は変わらずテレビに向かったままで、
だけど意識は自分に向いているということがはっきりと伝わってくる。
「涼介さんもですけど…啓介さんがいなきゃ、たぶんこんな濃い一年にならなかった」
Dのメンバーとして、啓介の恋人として、駆け抜けた一年がもうすぐ終わる。
「来年は…どうなるんですかね」
「どうもこうもねえよ」
テレビの中では新年を祝う花火が上がって、盛大な拍手が沸き起こる。
握っていた手がきつく包まれ、もう片方の手が伸びてくる。
耳たぶに触れるクセは相変わらずで、キスの合図にもなっている。
もう何度触れたか分からない、口唇が近づく。
触れ合ったそこも顎をすくう啓介の指も熱くて、包まれた手をさらに強く握り返した。
目を閉じると、そっと離れた熱の代わりにきゅっと鼻をつままれた。
「んん…っ」
「藤原、あけましておめでとう」
「…おめでとうございます」
年が明けると同時に啓介の携帯に次々と届くメールの着信音に
少しだけ不満げな視線を送りながら、つままれた鼻をさする。
携帯をちらりとも見ようとせず、拓海を優しい笑顔で見つめながら、
また近づいてちゅっと軽く口づける。
「今年も、来年も、その先もずっと、よろしくな」
進む道は分かれても、お互いの未来にその存在が当たり前のように在り続ける。
迷いのない視線に思わず胸が高鳴って、頬が熱くなる。
「あ、こ、こちらこそ、よろしくお願いしま…ン」
抱き寄せられ、もう一度塞がれた口唇はさっきよりもずっと熱かった。
2012-12-31
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