口実
「まだ、もっと奥まで入れても大丈夫ですよ」
「マジかよ、もう結構入ってるぜ?」
「けど痛くはないんで」
「この辺は?」
「ん…ッ」
「わり、痛かった?」
「いえ、大丈夫ですけど…もう止めときますか?」
「いや、まだだ」
「最近したからもうそんなに出ないと思いますけど」
「けどあともうちょっとなんだよ」
「あ、いま…っ」
「あ、や、…った」
「もういいですか?」
「ああ、ほらすげえ」
「見せなくてもいいですって」
「はい、じゃ次オレの番」
「…え? オレがするんですか?」
「他に誰がいんだよ」
「えー、オレやったことないですもん。ケガしたらどうするんですか」
「優しくしたら大丈夫だって。な?」
「優しくって…」
有無を言わさず拓海を起こすと同時に拓海の膝に頭を預ける。
「ちょっと、仰向けじゃなくてあっち向いてくださいよ」
「はいはい」
「じ、じゃあ、いきますよ」
覚悟を決めて、先端を恐る恐るその小さな穴の中に入れていく。
ゆっくりと中の壁に沿って掻きだすように動かすと、ときどきピクリと肩を動かす。
「痛いですか?」
「いや、くすぐってえ」
もう一度動かすと、またピクリと肩が震える。
いちいち反応が気になって先へ進めない。
「やっぱだめ、今日はここまで」
「何だよ。終わるならちゃんと白いふわふわ使えよ」
「はいはい」
注文通り柄の先についた凡天で仕上げたのに、啓介は起きようとしない。
軽く肩を揺すってみても、拓海の膝を掴んで頑なに動こうとしない。
「啓介さん、終わりましたよ」
「んー…もうちょっとだけ」
「…五分だけですよ」
2012-1-24
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