スキあり
「…い、おい、藤原ッ」
「はッ」
バンに隠れて膝を抱いてうとうとしていたところで
まどろみを遮るような声に顔を上げる。
「起きたかよコノヤロウ」
「すみません…」
「寝てるなんて余裕だな」
「そう言うわけじゃ…」
ハチロクの調整に少し時間がかかるらしく
涼介からお許しが出たのだと啓介を前に咄嗟に言葉は出てこない。
おまえさ、と言いながら拓海の前にしゃがみこむ。
「その顔はやめろ」
「…かお…?」
膝を抱えたまま啓介を見上げると、すぐ近くにあった唇が触れた。
「ちょ…っ」
「キスしたくなる」
「ししし、したじゃないですか、いまッ」
慌てて辺りを見回してみる。
幸い誰にも目撃されていないようだったが、血の気が引いて
一気に目が覚める。
「別に寝ててもいいけどよ」
「…?」
何かを企んでいるような笑顔に、ごくりと喉が鳴る。
背中には冷たいバンのドアがあって逃げられない。
「目ぇ閉じるたんびにチューな」
「あ、いまは目閉じてな…っ」
ぐっと近寄る啓介の顔に、反射的に目を閉じてしまった。
2012-1-30
back