負けず嫌い
「啓介さんってよく食うわりには細いですよね」
「そうかぁ? 普通だろ」
「ガリガリじゃないし腹筋もちょっと割れてるけど細身ですよ」
服を脱いだところでじっと見つめながら呟くのを聞いて、
自分の腕を見ながら啓介さんが不服そうに答える。
「たまにジム行ってるんだけどな」
「ていうか…何食ったらそんなデカくなるんですか」
「ん? ああ何だろうなあ」
「あ、頭撫でるのやめてくださいよ」
赤い顔で手を払うと、啓介さんはそのまま指先で肌を撫でながら呟く。
「おまえまだ十代だしあと数センチくらいは伸びんじゃねえの」
「…でも腕はオレのほうが太そうですね」
「……ム」
オレの腰を引き寄せて胸を合わせる。
すぐ傍にある顔が少し不機嫌に曇って、唇が尖っている。
「そんなことねえだろ」
ほら、と比べるように腕を寄せてみるけど、近すぎてよく分からない。
顔の作りも脚の長さも手の大きさもかなわないのだから
腕の太さくらい勝たせてくれてもいいのにと思うと笑えてきて、
顔を隠すように抱きついた。
「なに笑ってんだよ」
だけどあっさりバレて、大きな手で顎を掴まれる。
頬の肉がむにゅっと寄って唇が突き出ると、そこに口づけられた。
「…ふにふに」
これには負けると気持ち良さそうに笑って、何度もちゅっと音を立ててキスをする。
だんだん恥ずかしくなってきて、顎を捕らえる手を掴んで引き剥がすと
もう片方の手で啓介さんの腰を引き寄せてキスをした。
驚いた素振りくらい、見せてくれてもいいと思う。
薄目で見ると、悔しいくらい余裕の笑顔で。
「そういや、セックスで腹筋割ったやついたぜ」
「え…?」
どうやってと言おうとした唇がふさがれた。
キスの巧さもこの手の動きも太刀打ちなんてきっとできない。
やっぱり腕の太さくらい、勝たせてもらっていいと思う。
2012-02-28
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