マシュマロ

啓介さんはキス魔だ。
自覚がないのかよく分からないけど、とにかく二人きりになると
いつでもどこでもキスをしてくる。
肩を抱き寄せられたり、背中にそっと触れてきたり、サインはいろいろ。
とにかく隙あらばいつでもって感じで、耳とか顎とかこめかみとかにまで触れてくる。
ちゅって音を立てるから余計に恥ずかしい。だけどいやじゃないから困ってる。
オレはいっつも真っ赤になって、ただ黙ってうつむくことしかできない。

「藤原ってさ、触れるだけのが好き?」
「え、あ、…ンッ」

ソファに押し倒されて、がっちり顔を掴まれた。
口の中を啓介さんの舌が動き回って、弱いところも全部攻められる。
気持ち良すぎて思わず啓介さんにしがみついてしまった。

「それともこんくらい濃いのが好き?」

まだ唇が触れたまま、楽しそうに笑う。
朝日が差し込むリビングで寝癖がついた啓介さんの髪を見上げながら、
今度はオレから齧り付くようなキスを仕掛けた。

「…、どっち…でも」

唇を離してそう言うと、啓介さんはオレも、と笑った。
もう一度唇が触れそうになって、キッチンからトースターの音が響いた。
パッと花が咲いたみたいな笑顔になって、オレの上から降りると
啓介さんはいそいそとキッチンへ向かった。
後に続くと、啓介さんはトースターからマシュマロの乗った食パンを取り出した。
白いマシュマロには焦げ目がついていて、ほのかに甘い匂いが漂ってくる。

「おっ、ウマそ」

笑顔の啓介さんからそれを受け取り、シンクの前で並んで食べる。
立ったままの朝食なんて慣れなくてソワソワしてしまう。
この味が癖になりそうだなんて思っていたら啓介さんの指が伸びてきた。
振り向けば近づいてきてたのは手だけじゃなくて、唇の端をぺろりと舐められた。

「なにやってんですか」
「うまそうだったから」
「け、啓介さんも同じの食べてるじゃないですか」

真っ赤なオレを横目に朝食を平らげると、余ったマシュマロに手を伸ばす。
一息遅れて食べ終えたオレの耳たぶを、啓介さんが摘まんだ。
感触を確かめるようにそこを弄んでいる啓介さんを見上げる。

「何、スか?」
「確かめていい?」

言いながら近づいてきて、さっきまでいじくっていたオレの耳を噛んだ。
漏れた息がくすぐったくて離れようとしたのに、捕まってしまった。

「けーすけさ、…っ」
「ん?」
「ん、じゃなくて」

耳の周りを重点的に舐められて、ついつい息が上がってきてしまう。
鼻の先で首筋を撫でられて思わず変な声が出た。

「やっぱ似てる」
「何が、スか?」

マシュマロ、と掠れた声で囁いてもう一度耳たぶを口に含んだ。

2014-03-14

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