酔っぱらい
誰だよ藤原に酒飲ませたの。
いつもより眠そうな顔してるじゃん。
あ、メニュー広げた。
「藤原、オレ生」
「なま…?」
「生中、もう一杯」
聞き取りづらそうな藤原の隣に移動してべスポジ探して浅く腰かけた。
カラオケのソファってどうしてこうクッション硬いかな。
テーブルに足乗せて行儀悪いなっつー視線を受け流しながら
隣で見上げたオレに、藤原の顔がゆっくり近づいてくる。
「ん?」
ケンタの歌声がうるさくて聞こえなかったのかなんて思ってたら
ふにゅって。いや、どっちかっていうとちゅうって感じか。
不意打ちくらって、思わず固まっちまった。
「う…ん?」
「なまチュー、ですよね」
ふふふってそんな笑顔、反則だろ。
でもうん。間違ってない。藤原は間違ってねえぞ。
やかましい悲鳴が聞こえてくるけどそれはまぁどうでもいいや。
酔っぱらって上機嫌な藤原になんてめったにお目にかかれねえんだから。
「オレもなまチューほしい」
一緒になってメニュー見てたらいきなりぼそっとそんなセリフ。
これってずばり、据え膳ってやつじゃねーの?
オレだって酒入ってるからわりとブレーキの利きが悪いんだけど。
「それじゃあ一杯じゃ足りねえよな」
なんて囁くオレに向かって咳払いして邪魔する史浩に視線を送ると、
うつむいて胃を押さえながら追い払うみたいに手を振っている。
「っと…やっぱテイクアウトにすっかな。なあ? 藤原」
あーやべえ。ニヤついてんの、自分でもわかっちまう。
呆れ顔のみんなを尻目に覚束ない足取りの藤原を抱えて席を立った。
二日酔いの藤原が真っ青な顔で頭とケツを押さえてんのも
シーツに埋もれながらもうDに行けねえとか絶対飲まねえなんて言ってんのも、
誓ってオレのせいじゃねえよ?
…たぶん。
2014-04-26
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