犬も食わない
「なんで…キスしてくれないんですか」
どこか不機嫌だなと何となく思ったからどうしたんだって聞いたんだけど、
そんな回答は予想してなかった。
「いや、だっておまえ…」
「い、今まではいやだって言ってもしてきたくせに」
オレが悪いみたいに言われて、ついプッツンきちまって。
大人げないって頭では分かってても止まらない。
「嬉しそうにするでもねーしあげくグーパンチ喰らってんだぞ、こっちは。慎重にもなるだろうが」
「あれは、だって急にするから」
「そりゃ悪かったな! そんなにしてーなら自分からすりゃいいだろうがッ」
そんな捨て台詞で藤原に背中を向けたら、頭に枕が飛んできた。
いてーなチクショウ!
握りしめた枕が無残な姿に変わっていく。
「こっち向けよ啓介さんのバカ!」
「バカとはなんだこのヤロ…ッ」
オレの体はひっくり返されて、藤原に押し倒されちゃったりしている。
目を丸くしてると藤原が赤い顔で不満そうにつぶやく。
「好きにしていいって言ったじゃんか」
そうは言ってない。
けど…悪くない。
腰に跨る藤原の脚を撫でながら近づいてくる顔を待つ。
唇が触れたら思いっきり抱きしめてやろう。
オレだってそろそろ我慢の限界だったんだ。
2015-09-20
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