春はすぐそこ
「啓介さんってオレのこと好きなんですか?」
ガードレールに腰かけた拓海に唐突に切り出され、
平静を装ったままペットボトルの水を飲み込む。
「…何でそう思う?」
「違うんですか?」
拓海は啓介の問いかけに質問で返し、
いつもと同じぼんやりとした顔をアスファルトへ向けた。
「なんだ、残念」
そんな小さな呟きが耳にこびりついて離れない。
脳がその言葉を処理できないうちに拓海が腰を上げる。
啓介は反射的に手首を掴んでいた。
「や、あの違うならいいです。オレの勘違いです」
目を見ようともしない拓海は少しだけ顔を赤くして、
それでも手を振り払うことはしなかった。
「オレそんなダダ漏れだった?」
「って言うかその、そうだったらいいな、ってオレ、えっと」
みるみる紅潮していく頬に思わず釘付けだった。
赤い顔に手を添えると、思いきり跳ね除けられて逃げられた。
「言い逃げはずるいだろ」
追いかける足取りは軽く、締まりのない顔を隠すべく片手で口元を覆った。
2016-03-10
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