インソムニア
啓介さんは情熱的だ。
何でもかんでも熱烈で、濃厚で、ちょっとしつこい。
「も、もういいでしょう」
「まだ足りない」
そう言って酸欠になるくらいにキスをされる。
啓介さんはキスが上手くて、何より気持ちいいから強く出られないオレもオレだけど。
「ん、明日早いんですって、ば」
無理やりに顔を離して片手で唇を隠した。
少し不満気な啓介さんは渋々引き下がって、勢いよく枕にうつ伏せになった。
オレは内心名残惜しさを感じながら、それを振り払うようにぎゅっと目を閉じる。
啓介さんはしばらくもぞもぞと寝返りを打ち、やはり眠れないのかベッドを降りた。
オレが眠っていると思いこんでる啓介さんは、すぐそばでオレの寝顔を覗きこんでいる。
そのくらい、目をつむっていてもよく分かる。どんな顔をしてるかも。
前髪をかき上げて、オレの額にそっとキスをしてくる。いつものことだ。
反応を返さなければ、唇にもキスを仕掛けてくる。
起きてるときにはほとんどしてもらえない優しいキスだ。
唇が静かに触れるだけの温かいキス。
オレを起こさないようにっていうだけの、忍ぶようなこのキスが実は大好きだ。
「好きだぜ、藤原」
トドメがこれだ。心臓がいくつあっても全然足りない。
この瞬間のためだけに、オレはいつも眠りに落ちるのを何とか我慢してるんだ。
2016-09-03
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