空の下で

会いたいと言うのは簡単だ。
物理的な距離の前に実現することは容易ではなくなったけれど。

一足先に広い世界に飛び出した啓介さんは、
それでも以前と変わらずオレが照れて困惑するくらいの愛情を注いでくれる。
最近始めたというサーフィンの腕は上達したのかとか食事は気を付けているのかとか、
別の話題を振っても返ってくるのは甘い言葉で、鼓膜をくすぐる声に鼓動は速くなるばかり。
愛を囁き続けるその口を今すぐにでも塞いでやりたくなる。

「啓介さん、オレのこと愛してますか」
「なに、急に」
「どうなんです」
「どうって」
「聞きたい」
「…電話じゃ言いたくねぇ」
「なら今すぐ会いたいな」
「おま…っ、くそ、今度会ったら覚えとけ」

拗ねた口調がたまらない。
こんな啓介さんを独り占めしているこの時間が好きだ。
熱い視線がなくても、今この瞬間啓介さんはオレのものだ。
だけど早く会いたい。
今すぐ飛んで行って、身を焦がすような熱ごと思いっきり抱きしめたい。


異国の空の下、久しぶりに見た笑顔は太陽よりも眩しかった。

2016-09-08

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