カワイイいきもの

「ヤキモチ、妬きました」
「は? …え?」
「人助けだったってのは分かってるんですけど」

啓介の部屋で、拓海は部屋の主に背を向けたまま呟く。その耳は真っ赤だった。

「藤原、こっち来い」

そう言いながら啓介は拓海に歩み寄り、腕をつかんで振り向かせた。

「昼間の、迷子の世話、つーかその母親とのこと言ってんのか」
「そうです」
「バッカだなーおまえ」
「そんなこと、自分でもよくわかってます」
「自分でこんなこと言いたくねえけど、オレ別にモテたくてモテてるわけじゃねえぞ」
「それも分かってますよっ」

真っ赤な顔をそらせた拓海の語気が強くなる。
啓介は拓海の腰を抱き寄せた。
鼻先が触れ合う距離で、啓介が囁く。

「オレが藤原しか見てないってこと、本当は分かってるよな」
「それは…」
「そんな心配するだけ無駄だって聞きたいなら何度でも言ってやるけど?」

赤い顔のまま黙り込んだ拓海を、啓介はじっと見下ろす。
こんなやりとり、これまでの自分なら面倒くさいの一言で済ませたはずだ。
それが今やどうだ。
こんな気持ちになるなんて、誰が想像できる?

「これ喜んじゃダメなんだろうなあ」

ニヤつきが止まらない顔を隠せないまま、拓海の額に口づける。
ぎゅうっと抱きしめると同じような力が返ってきた。
このカワイイいきもの、どうしてやろうか。

2024-12-31

back